秘訣は忘れること

今週はハルトの体調が良くなくて機嫌が悪い。
微熱が続いて、保育所を休んだり、行っても途中で電話がかかってきて早退になったり、夜寝ていて突然泣き出したり。夏樹の調子もイマイチだ。

まあ風邪だろうし放っておけば治るだろう、と思っていたのに、結局1週間も調子悪いのが続いているので、今日はとうとう子どもふたり抱えて病院に連れて行った。
結論としては、ふたりとも同じ風邪でしょう…という診断。


子どもの機嫌がずっと悪いのは、育児係としてはかなり身にこたえる。

夜は頻繁に起きてグズグズ泣くし、日中もなんだかよくわからないことでめそめそと泣いている。

理不尽なことを言って言いがかりをつけ、とにかく泣いて泣いて。
ふたりの機嫌悪さが重なるともう最悪で、泣き声は相乗効果で和音みたいになるし、お互いにお互いを嫌がってさらに泣くし、まさに修羅場。

…こういうときは買い物も料理も洗濯も片づけもみんな無理。

口を開ければ「抱っこー」で足の周りにまとわりついてくるし、風呂入っても「抱っこして!」としなだれかかり、しまいには階段も下りなくなり、病院に行っても子どもふたりを両手に抱える羽目になり、正直かなりツライ。


昨日の昼寝からのハルトの寝起きはまた最悪の機嫌で、ギャーギャーギャー泣いて転げ回って、あまりにも暴れ回って壁に頭を打ち付けてしまった。
それが痛くて悔しくてまた暴れて、泣いて叫んで、それはそれは凄まじい有様。

オモチャを投げて壊し、夏樹を豪快に蹴飛ばして、全身を使って大暴れ。

投げるのはやめなさい!夏樹に痛いことするな!という我らの大声でますます泣き声と暴れっぷりはヒートアップし、まさに怪獣。

もちろん、こうなってしまうと対応はふたりがかり。
うちは子育て要員がふたりなので、負荷は2分の1。それでもさすがの我ら夫婦もほとほと疲れてしまった。まあ人間を育てていればそんな日もあるよな。

やっぱり夏樹が生まれてから、ハルトが機嫌悪いときのその「機嫌悪さ」はよりパワーアップした感じはする。やはり満たされない思いがあるのだろうか。


その後ようやく落ち着いてきたので、みんなで少し前の旅行の写真を見ていた。

「なんだか楽しそうだよねー、旅行中ずっとハルトの機嫌が良くてよかったよなー」
「ほんと。なんで旅行中は機嫌いいんだろう?」
「いつもみんな一緒だから?」
「そうかもなー……いや、ちょっと待てよ…」

「よく考えると、空港降りたとき大変だったじゃない?
大声で泣いて転がって暴れて。抱っこもできず、かといってカートにも乗らず、人波のなか床に転がって、荷物と夏樹抱えて途方にくれたよねえ」
「そうだ、この車の時も泣いて泣いて手に負えなくて…」
「そういえば、このレストランも地獄の使者のように暴れて…」

…旅行中ずっとハルトの機嫌が良く、、なんてことはまったくの間違いで、実際は大変な場面がいっぱいあった。大変な場面の間に、楽しい場面がある、という感じだった気もする。でもそういう大変だったことはほとんど忘れていて、記憶のなかの旅行は楽しい。


そして気づいたこと。
子育て中の夫婦の頭には、かなり強力な忘却装置が付いている…。

今週はハルトの機嫌が悪くてこんなに大変だけど、きっと来週には忘れている。
子どもらが交互に起きて、大声で泣いたり、夏樹に顔を叩かれたりして全然寝られず、今週はふたり揃って睡眠不足であることもきっと忘れている。

ハルトがある程度大きくなれば、機嫌が悪くて手に負えなくてホトホト困り果てたことがあったこと自体忘れてしまうに違いない。

ハルトが大人になる頃には子育ての楽しかったことだけを覚えていて、ハルト?育てやすいいい子だったよー、なんて言うのかなあ。

夫婦でそんなことを話していたら、もう今日の暴れっぷりを忘れそうになってしまった。

もともと忘れっぽいほうだけど、育児を担当するようになってから「忘れっぽさ」はよりパワーアップした気すらする。

子育てに限らずなんでもそうかもしれないけど、楽しかったことだけしっかり覚えていて、辛いことはみんな忘れてしまうなんて、なんて都合の良い頭だろう。

でもだからこそ、子育て続けられるのかも。
楽しそうに遊んでいる子どもを見ながらそんなふうに思った。

Koso
でも子育て全体としては楽しいこと嬉しいことのほうがずっと多い!