職業、専業主夫

先日、昔からお世話になっているある会社の社長と少し話をする機会があった。
最近どう?という問いに対して、育児をやってみたくて育休を取ったこと、その後東京に転勤と言われて仕事を辞めたこと、 いまは専業主夫をやって子育てに取り組んでいること…などを初めて話した。

驚かれたけれど、でもこの社長さんに話がうまく説明出来て、まだ子どもたちも小さいのでもう少しこの主夫を続けていきたい、 とちゃんと話ができて、なんとなく心の荷物が少し軽くなった。

いままではこの専業主夫状態を知られないように悟られないように、と気にしていた自分がいたのだけど、最近は少し心境が変わり、 積極的に自分が主夫をやっていることを人に説明できるようになり、一番知られたくない相手だと思っていたこの社長さんに話が出来た、 というのがその理由だ。


シュフになる前は毎日コンピュータとにらめっこして、たくさんの人たちとチームを組んで、打ち合わせをしては仕様を練り、 ドキュメントを書き、プログラムを書き、テストして…とシステムエンジニアとしてバリバリ仕事をしていた。
それなのに、いまは毎日毎日朝からご飯の支度、おむつ交換に始まり、子どもの相手、買い物、子どもの散歩と世話、後かたづけ、掃除に洗濯、 風呂入れ、寝かしつけまでいわゆる「おかあさん」の仕事そのもの。

男なのに毎日オムツ洗いですか?
男なのにチラシチェックして両手にネギだのトイレットペーパーだの持って買い物ですか?
男なのに毎日子どもと動物園ですか?男なのに「ごはんできたよ~」ですか?

やっぱり心のどこかにそんな「おかあさん」状態の自分が受け入れられない部分が少しはあった。

確かにどんなにおいしいご飯を作っても、どんなにハルトが楽しそうに笑っていても、家族以外の誰かが評価してくれるわけでもないし、 給料がもらえるわけでも地位が上がるわけでもない。


でも。
ハルトが2歳になっていろいろなことを言うようになり、また夏樹も生まれた。
ハルトは毎日おでかけして本当に楽しそうに過ごして大きくなっているし、夏樹の成長もとても楽しみだ。

毎食、少しは手の込んだ手料理、手作りのおやつ。
毎日みんなで食卓を囲み、全員でお風呂に入って、みんなで絵本を読んで、4人で川の字?になっておやすみ。

なによりも、家族がいつも一緒にいられること。
妻とチカラを合わせて、子どもたちを育てていること。
妻と子どもたちのために毎日ごはんを作っていること。

こんなに素敵なこと、贅沢なことが他にあるだろうか。

子育てには部分部分には困難なところや大変なところもあるけれど、でも全体としてはとても満たされた日々。
子どもが寝た後で夫婦で話をする時間もちゃっとあるし、夫婦間のコミュニケーションは質も量も充分で、意識合わせも完璧、 気持ちにも余裕があるし、我が家はいつもみんなの笑顔でいっぱい。

たとえシュフ業が無賃金だったとしても、大事な家族がいて、こんなに素晴らしい日々がある。


自分は幸せなシュフだ。

家事や育児をひとりで抱え込むこともなく妻と二人三脚で取り組んで楽しんでいられるし、子どもたちもいつも楽しそう。

それらはみんな妻のおかげで、妻がいろいろなことをがんばってくれるからこそ、だ。
男女を逆にしたら、こんなに子育てする配偶者はいないし、こんなにシュフを誉めてくれる配偶者もいない。

大小の心配ごともあるけれど、いつまでこんな状態が続けられるかわからないけれど、もちろんいろいろ迷いもあるけれど、 でも今はこれでいい。

…今は自分自身がこの状態にとても満足しているし、誰かなんと言っても、子育ては何にも代え難い、今の自分の仕事。

最初の社長氏にそう説明したとき、やっとこの仕事が自分のものになった…そんな気がした。