家に真剣に取り組む

先日、我が家を設計した工務店社長氏がうちと同じような家を建てたい…というIさんを連れてやってきた。

「うちはモデルルームじゃないし…」と当初はちょっと思っていたけれど、Iさんが語る地元の素材で家を建てたい、という話や、家族のあり方を考えたとき、自分たちはこんな家が欲しい、という話についつい引き込まれ、なかなか楽しい時間だった。

そのなかで、うちの家を設計し、建てた社長が言ったこと。

「家造りは真剣に取り組まなければいけない」

家はその人の人生の舞台であるし、人の価値観や生き様を形に表したもの、そしてその家族の顔だから、その人、その家族の生き方や「どう年齢を重ねていきたいか」ということをしっかりと見つめ、それを反映したものでなければならない。

だから当然、家は100軒建てたら100軒とも違うモノになるのは当たり前で、それが自分の仕事だと思っている。だから施主に対してもいい加減な気持ちで家を建てないよう、大きな部分から細かい部分まで、きちんと詰めることをいつも注意している…という話。

…なるほど。
そんな考えで家の設計を行っていた、なんて話は初耳だ。

でもやっぱり思い返してみれば、「これでもかっ」と打ち合わせを重ねたり、同じ本をたくさん読んだり、一緒に講演を聞きに行ったり、さらには一緒に旅行して建築家や林業家を訪ねたり…という「意識合わせ」の部分、そしていろいろな要素を検討しあう「話し合い」に、ずいぶんと時間を使ったのがこの人との家造りだった。

手間と時間ばっかりかかり、工務店経営的に見て上手な家造りとは違うなー、といつも感じていたけれど、そんなポリシーがあったとは。


この家は建って3年経ったけれど、いまでもこの家が大好き。
それはやっぱり自分は家造りに真剣に取り組んで、十分考え抜いたものだし、当時として自分たちが導き出した一番良い「自分たちにあったもの」だと思えるから。
自分たち家族の顔です…と自信を持って言える。

そう考えると、「家造りは真剣に取り組まなければいけない」というのは正しい考え方なんだろうな。

うちはもう次の家造りがあるのかないのか、たぶん無いとは思うけれど「家は真剣に建てないといけない」という言葉は頭の隅に置いておき、これからうちを見に来る人に伝えていきたいと思う。