心のバリアフリー

赤ちゃん連れでいろいろなところに行くと、ときどき困る場面に遭遇する。
たとえば、おむつ交換台がない。赤ちゃん用のイスやベッドがない。
こういうのもバリアだよなぁ。バリアフリーって言ってもまだまだだなぁ…と思うこともある。

ところが逆に、設備がなくても問題がない場合もある。

ホテルで朝食をとるとき、赤ん坊を置くところがない。
「どうしようか…」と迷っている私たちを見て、係の人がイスをふたつとタオルを持ってきてくれた。
イスを2脚正面に並べてタオルを敷くと、簡易ベッドに早変わり。
なにも専用の赤ちゃん用ベッドなんてなくても、ちょっとの工夫と心配り。

古都の和菓子屋さんのトイレには、おむつ交換台がなかった。
「おむつ交換ありませんか?」と聞いたら、やさしそうな店員さんは、社員休憩室を抜け、エレベーターで上の階にあるオフィスエリアに案内してくれて、誰もいない社員食堂の奥にある小さな和室に案内してくれた。
「ここでゆっくり交換してください」「ごみは処理しますから私にくださいね」

たまたま宿泊した旅館。部屋に食事が運ばれてきて、女将さんがひとこと。
「少しのあいだ赤ちゃんを見ていますからごゆっくりどうぞ。大丈夫、私の3歳の娘と一緒にいますから」
いつもはにぎやかな食卓が今日はとても静かで、ひさびさに夫婦ふたりでゆっくりとごはんを食べることができた。

新しい施設には快適で便利な設備やサービスがあるけれど、そんなものがなくても、人々の小さなやさしさや心配りが、バリアフリー。