人間おしゃぶり

ハルトは無類のおっぱい好き。
昼間も頻繁に乳を欲しがって、朝起きたら乳、着替えたら乳、おむつ交換したら乳…と妻の顔を見るたびに乳を要求している。

日中、妻の仕事中は別の部屋でハルトの相手をしているけれど、ときどき電話がかかってきたりして妻の声が聞こえたり、姿が見えたりすると、すぐに乳が欲しくなってしまって泣く。

そして夜間は今でも1~2時間おきに乳。
生後10ヶ月というと、もう離乳が完了している赤ちゃんもいるだろうし、生まれたばかりの新生児じゃあるまいし、いくらなんでも回数が多いのでは?

乳を欲しがる…といっても、母乳をそれほど飲んでいる…というわけではなく、単に「おしゃぶり」しているだけの様子。
乳をしゃぶっている時間はわずかだし、乳の感触を確かめて安心している…という感じにも見える。

離乳食は順調に進み、食べる量やウンチの様子から想像すると、栄養の大半は食べ物からとっているように見えるし、母乳の飲み過ぎで離乳食に支障がある…という感じでもない。
体重が増えすぎでもないし、特に肥満児でもない。

とはいえ、日中はいいとしても夜間の授乳の回数の多さには、さすがの妻も一時期ちょっと大変で、いったいどうしたもんだろう?と考えていた。

「乳を飲むからなにか困ったことになっている」…というわけではなく、深夜に軽く起こされるのがなんとかならないのか?

助産師さんや医者など、いろいろな人に聞いてみたり、ネット上で調べてみたりすると、人によって言うことはマチマチ。

多いのは「日中もっと疲れるように運動させれば良いのでは?」という声。
でも専業相手人間(夫である私です)が居て、もうこれ以上は無理ってくらい相手しているし、運動も十分している。

それから「要求されても断固として応じず、あきらめるまで他の方法で寝かしつければ?」というもの。
夜中に泣き始めたら、すぐにおっぱいを差し出さずに、一度起きて子守歌でも歌いながら部屋を歩き回れば?…という話。

これも一時は検討してみたけれど、しかしいくらなんでもそれは大変だ。
ちょっと大変なことを解決するために、もっともっと大変なことをする…というのはちょっと違うような気もしないでもない。

考えてみると、そもそもなぜハルトはそんなに乳を欲しがるのか。
それはやっぱり乳をしゃぶることで安らぎが欲しいのだろうし、安心したいのだろう。
だって、まだ彼は赤ちゃんだから。
0歳児の間くらい、好きなだけ甘えて好きなだけスキンシップして好きなだけ愛情をもらったっていいはず。

離乳食もちゃんと進んでいるし、おっぱい欲しがるくらいならつきあってあげようかな。
「…だって乳しゃぶっているほうが幸せそうだから」と妻は言う。

そんなわけで、妻の「人間おしゃぶり」状態はまだ続きそうだ。