出発ロビーにて

日曜日午後5時30分、羽田空港。

帯広行き最終便は、そろそろ搭乗の時間だ。


…9月の最初の週末、金曜日にお休みをもらって、神奈川の実家に帰省した。
息子が生まれてから初めての実家行きで、自分の実家と妻の実家に1泊ずつ。
義父義母にとっては、はじめての孫とのご対面。

生後3ヶ月の小さな赤ちゃんは本当にかわいくて、双方の親にとっての初孫ということもあり、自分の親も妻の親も祖母もみんな顔をくちゃくちゃにして喜んでいた。

2泊3日の間家からほとんど出ず、旧友に会うこともせず、ひたすら親たちに赤ちゃんを見せること徹した、ちょっと変わった帰省になった。


前回は今年3月に来て、そのとき妻はおおきなお腹をしていた。
今回は9月、そして次来るのは年末かな。

年末になったら生後半年だから、今とはずいぶん様子も違うのだろう。

たった3日間の「生後3ヶ月の孫」との時間。
4人の両親は喜んでくれただろうか。


そろそろ出発の時間。

いつもは写真なんて絶対に嫌がる義父が、明るい出発口をバックに孫を抱いてカメラに向かって微笑んでいる。

義父から赤ちゃんを受け取った。

じゃあ、また。


自分の腕の中で、何も知らずに小さな腕をパタパタと動かしている息子の顔を見る。

彼が大きくなって、自分の住みたいところを見つけて去っていったら、自分たちはどんな気持ちになるのだろう。
そうだ、親なんていいから自分の好きな行き方を追求しろよ~と思うかな。
それともやっぱりさみしい気持ちになるのかな。

…そんなことを思いながら歩いていたら、ちょっと切ない気持ちになった。

ふと振り返ると、義父義母がまだ手を振っている。


子どもが生まれて、少しだけ親の気持ちが理解できたような気がする。

午後6時10分。
定刻よりやや遅れて、私たちを乗せた飛行機は北の大地に向けて飛び立った。