怪しい人影

夜、犬の散歩で歩いていたら、なにやら怪しい人影。
このあたり、夜に人を見ることなんてまずないので、懐中電灯を持ってフラフラしている姿はとても目立つ。

どうやらクワガタを探しているらしい。
このあたりは農村地帯のなかにポツンとある市街地?で、明るい外灯があるものだから、よくクワガタがいる。
このおじさんもクワガタ探しらしいけれど、服装といい、なんかちょっと怪しい感じ。

ここは田舎。
相手が誰であれ、人を見かけたらまず声をかけないと。防犯上の意味でもね。

「こんばんは~。クワガタですか?」
「おっ、こんばんは。…男の子?」

えっ?ああ、この犬のことね。

「いえー、女の子ですよ」
「そっかあ。おめでとう。もううちにいるの?」
「うち?いつも家にいますけど…?」

??
おめでとう??

「奥さん元気?里帰りしなかったんだって?神奈川は遠くて大変だもんなぁ」

はっ?

…っとここで初めて気付いた。
ああ、それってうちの赤ちゃんのことか。

「あっ、ああ。赤ん坊ですね。ああ、いや男の子です。息子です。
5月下旬に生まれたんですよ…」

なんてしどろもどろ。
しまった、なんだか怪しい受け答えになってしまった…。

自分は怪しいおじさんと思って声をかけたけれど、向こうはちゃんと自分のことを知っていて、子どもが生まれたことも、神奈川出身だということすら知っている。

むー、しまった…。

暗いし、結局相手が誰だかわからずに「ではまた」と別れてしまった。

どうも人の顔と名前を覚えるのが苦手で、もう5年も住んでいるのにイマイチ地域の人がわからない。
でも向こうからすれば、移住者だし、子どもが生まれたなんてちょっとした地域のニュース?だから、ちゃんと知っているのかも…。

田舎ってそういうものかもしれない。

おじさん、不審者扱いしてごめんなさい。
誰だか未だにわからないけれど。