田舎の水

自宅がある集落は水道水がとてもおいしい。
くさみがまったくなく、ほどよい冷たさ、かすかな甘み。
塩素のにおいなんて微塵もしないし、なんともいえないまろやかな風味があって、とにかくおいしい。
コーヒーを入れても、お茶を入れても、もちろんご飯を炊いても、とてもおいしい。

この水道水、聞いた話によると「簡易水道」というやつで、日高山脈に降った雨がずーっと地下を通ってわき出すところがあり、それをこの地域の水道に使っているそうだ。
つまりわき水がそのまま水道から出てくる…ということらしい。
ちょうど集落は、日高山脈のすそ野のところにあるので、それは本当なのかも。

都市部の水道なんか比べる対象にすらならないのは当然として(職場の水道水なんて不味すぎてとても飲めない)、全国の○○○の名水とか、市販のミネラルウォーター等と比べても、誰がなんと言おうと、うちの水道の水のほうがおいしいと思う。

九州だの長野だの、あるいは道内の名水地など、たしかに名の知れた天然のわき水がでているところの水はたしかにとてもおいしいけれど、でもウチの水道水のほうがもっとおいしいなぁ…と思うのはそこに住んでいる者のえこひいきだろうか。
家の水道をペットボトルに入れて売ったら、売れそう…と個人的には思っていたりもする。

さて、ここに移住してきた当初から、この水はどこにも負けないおいしさだ…とこっそり思っていたけれど、まわりに住む人に聞くと、なんと浄水器を使っている人がいたり(残留農薬が心配だとか)、どうも特別「おいしい」という認識はされていない様子。

えー?
この水のためだけにこの地に住みたくなるほどおいしいと思うんだけど…。

ところが今年になって、集落内にパン屋さんができた。
このパン屋さん、ずいぶん昔からうちのSOHOのお客さんで、パン屋ができるずっと前に「土地ありませんか?」みたいなことを聞いてきた。そのときはどうしてこの集落が良いかまでは聞かなかったのだけれど、後から聞くと実はこの地域の「水」に魅力を感じてこの土地にパン屋を建てたそうだ。

そう!そうでしょ~!

このパン屋さん、けっこういろいろなところで「水がいい」と宣伝しているらしく、ようやくこの地域の住む人にも「地域の水はおいしい」という認識が少しは広まったような気がする。

ちなみにもちろん我が家では、このおいしい水を使って、ごはんや煮炊きはもちろん、風呂もトイレもこの水。
風呂の肌あたりもとても良く、うちに泊まった人が我が家で風呂に入ると、その点を指摘する人がけっこういる。

「そんなにおいしいのなら飲んでみたい!」と思っても、残念ながらこの水は市販されていないので、住む人に頼んで飲ませてもらうか、あるいは自分が住んでしまうしか方法はありません(笑)

田舎に暮らしても「田舎暮らし」らしいことなんてなにもしていない…という話題がよく出るけど、でも水道をひねるとこんなおいしい水が出てくる…というのはやっぱり田舎暮らしの良さかもしれない。