命名、歩結(あゆむ)

あなたが産まれる少し前、私たちの国を大きな悲劇が襲いました。 
大地が揺れて津波が押し寄せ、みんなが悲しみに暮れています。 

でも、そのなかで人々が助け合い、励まし合い、いま、復興に向けてみんなの気持ちがひとつになろうともしています。 

そしてその災害のなかから、私たちは思い出したことがあります。 

人が人として生きるために、忘れてはいけないこと。 
でもみんなが少し忘れていたこと… 

それは、いろいろな土地、いろいろなことがら、いろいろなもの、そしていろいろな人たちが、実はみんなつながっている、ということ。 
生きとし生けるもの、すべて結ばれている、ということ。 


私たちは誰ひとりとして、ひとりで生きていくことはできない。 

地震から2週後に産まれた、小さな赤ちゃん。 
私たち家族にやってきた小さな命。 

あなたには人と人とを結ぶ、人の気持ちを結ぶ…そんな存在になってほしい。 
そして自分の足で、自分の力で、その人生をゆっくりと、しかし確実に歩いてほしい。 


あなたが生まれた日は、お天気のよい、あたたかい日曜日でした。 
昨夜ひさしぶりに降った雪が解けて、十勝の雪解けが進み、春の訪れを肌で感じる一日…ひさしぶりに大地から小麦の緑が顔を出した日。 

こうやって十勝の雪が解けるように、少しずつ自分の足でその一生を歩いていってほしい。 


命名、歩結(あゆむ)。 

どうかその一生が素晴らしいものでありますように。
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