スローな食卓

自宅でパンを焼くようになり、またいろいろなところのパンを食べ比べするようになってから、妻がとても気にしているものがある。

それは天然酵母パン。

パンって普通はイースト菌を入れて発酵させるけれど、このイーストの代わりに、身の回りにある普通のものを発酵させて、それを酵母として取り出して焼くパンのこと。

イーストだって酵母の一種みたいなもんだし、別にイースト菌のパンはダメ…というわけではないのだけれど、でも時々買う天然酵母パンは独特の風味と食感があって、いつか自分で作ってみたい…と思っていた。

市販の天然酵母タネというのもあるのだけれど、せっかくだから、酵母自体も家で培養してみたい…とは妻の言葉。

酵母の元はなにがいいかなー?
と目に付いたのは真っ赤なイチゴ。よし、これでやってみましょう。

というわけで、ビンを消毒して、水とイチゴとハチミツ(酵母のエサ)を入れてしばし放置。
それが3月20日のこと。

そのうちイチゴが白く変色。グスグスになって、水も白濁。
もし知らない人が見たら「腐っている!」と一瞬で捨てられてしまいそうな怪しい状態に。

さらに常温で置くこと数日。ブクブクと泡が立ってきたら酵母の完成だ。

フタをあけると、イチゴの香りが広がって、なかなか良いでき。(根拠無し)
白くて原型を留めていないイチゴは捨てて、残りの液でパンを作りましょう。

パンの作り方自体は普通のパンと同じ。コネコネと生地を丸める妻。
今回はバターも砂糖も卵も牛乳も入らないし、ヘルシーなパンになりそう。

「明日起きたら170℃で焼いてね」という言葉に従い、予熱したオープンで焼くこと25分。

いつものパンとはちょっと違う香りがオーブンから香ってくる。

できました~。
Pan

やや焼き色が薄くてパン自体もなぜかやや灰色だけど、ほのかに香るイチゴの香りと、ブルーチーズのような、微妙な発酵臭がある。

おそるおそる食べてみると…んんっ、うまい。
やっぱりイチゴの香りが残っていて、そこに独特の発酵の香り。いつものハルユタカ(北海道産小麦)の風合いと、微妙にマッチしていていて、食べ慣れたイーストのパンとは明らかに違う。
食感はモチモチとしていて、ずっしりと重くてボリュームがある。

いやはや、初めてでこんなに上手に出来て良かった。
イチゴをビンに入れたのが20日、パンを焼いた今日は30日だから、10日もかけて作ったパン。

食べ物って手間をかければかけるほど愛情がこもっておいしいけれど、本当においしいスローフードになった。