季節感のない家

昨日、家の外にある水道管を破裂させてしまった。

この水道管は庭や緑化屋根に水を遣るために配管してあるのだが、冬になる前に管の中の水抜きをしないと、管のなかの水が凍ってしまい水道管が破裂してしまうことになる。

そんなことはすっかり忘れていている間にも冬は着実に近づき、冷え込んで氷点下になった昨日の朝、とうとう破裂…となってしまった。


水抜きを忘れてしまったことには理由がある。

移住時に住んだ家賃2千円の古い家は、すきま風が吹き込む、実に季節感溢れる家だった。
この時期は、日々寒くなっていくのがダイレクトに体感でき、今日は暖かい、今日は寒い…と実感しながら生きていた。

氷のように冷たい床。心臓が止まりそうなほど寒い浴室やトイレ。
寒い日は家の中で凍え、布団にくるまって寒さをしのぐ。

夜中に凍ってしまい、うまく炊けない朝のご飯。
真冬には家の中に雪が吹き込み、床に置いた犬の水が凍り付く。
今夜のこの寒さだったら、明日は冷え込むだろうから水抜きをしておこう…そんなことを思う日々。


それがこの四つ葉屋根の家はどうだろう。
魔法瓶のようなこの家は、外が5度だろうが、-5度だろうが、はたまた-20度だろうが、家の中にはほとんど無関係。
外の音もほとんど聞こえないので、カーテンを閉めてしまえば、雨が降っているんだか、寒いんだか暑いんだか全然わからない。

家の中は常時24度程度に保たれ、メインの床下暖房の操作も給油もぜんぶ自動。
家の中で長袖なんて着たことすらないし、全面床暖房でスリッパも靴下もいらない。

水抜きなんて必要ないし、そもそも水抜き栓なんてこの家にははじめから無いのだ。

最新の高気密高断熱の家の威力は絶大で、それはそれは快適そのものだ。


でも、本音ではちょっとだけ前の家が懐かしい。

朝、となりの家族が雪かきをしている音。
2月、寒くて寒くて寝られない夜が続き、ある日ほんのちょっとだけ暖かいことを感じた朝。
ポタポタとつららの溶ける音。
2枚重ねてはいた靴下を1枚にする日。
電気毛布の温度設定を少し下げられる夜。

春の訪れを感じる瞬間、なんだかわからないけれど、魂を揺すられるほどの感動がある。
春を感じて感極まり、とうとう涙した家族。
それは長く寒くつらい冬を乗り越えた者だけに与えられた感情だ。


季節を全身で体感できる家と、季節感のない家。
500mくらいしか離れていないけれど、とても同じ地域に建っているとは思えないほど違う2件の家。

前の家に戻りたいとは思わないけれど、でも、あの家はあれはあれで良かったな。
そんなことを思う今日この頃だ。