砂利道を抜けて

自宅から少し山のほうに入ったところに、とっておきの紅葉の場所がある。
赤ちゃんをチャイルドシートにくくりつけて、そんな秘密の場所を目指した。

空は赤みを帯び、太陽は日高山脈に消えようとしている。

いつのまにか寝てしまった赤ちゃんをそのままにして、カメラを片手に車を降りた。
渓流にかかる車1台の幅しかない小さな橋から、その木を見下ろす。

山の谷間から、その木にだけ傾いた太陽の光が当たっている。
それはまるで、今日の主役を照らすスポットライト。

一日の最後の光を浴びて、浮かび上がる真っ赤な葉。
北の大地の、短い季節の終わりを彩る色。
それは、本当にこの世の色のものとは思えないような赤い赤い色をしていた。

あまりの光景に見とれていると、太陽の光は次第に角度を変え、葉を照らす場所を移動させていく。

誰もいない山道、誰も植えていない自然の木。
こうして毎年、人知れず暮れていく日高山脈の秋。

誰がデザインしたわけでもないのに、どうして自然はこんなにも鮮やかな色をしているのだろう。

そうだ、ひとりで見とれていないで、少しは写真撮らなきゃ。
何枚かシャッターを切って顔を上げると、もう太陽の光は消えていた。

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自宅からその場所までの道のりは、こんな感じ。

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すれ違う車もいない道。